敏腕社長に拾われました。

「あの時は、本当にごめんなさい」

「いや、こっちも再度確認すればよかったんだ。それに一日遅れたけど納品してもらって、こっちとしてはさほど問題なかったみたいだし」

頭を優しく撫でられると、その時のことを思い出して目に涙が溜まってくる。

あの時上司に頭ごなしに怒られて、クビになっても『あんな上司の下で働くくらいなら、クビになったほうがマシ』なんて思っていたけれど。

やっぱり悔しかった。

でも根っからの明るい性格が邪魔をして、落ち込んでるように見えない私は浩輔に捨てられた……と言うのが現実。

「それから、智乃の住んでるところを調べてもらった。そしたら男と一緒に暮らしてるって報告が来てさ、もう落ち込んだよ。俺の恋もおしまいかってね」

「ホントに?」

「マジだって。だからなかなか諦めつかなくて、仕事で会合に出かける日に智乃が住んでるアパートを見に行こうとしたんだ」

なんだか虎之助、ストーカーちっくになってるんですけど……。

虎之助を見る目が、怪しい物を見る目に変わってしまう。

「なんだよ、その目。でも結局行けなかったんだよ。もし智乃が同棲してる彼氏と仲良く出てきたりでもしたら、立ち直れなくなりそうで。でもその時、奇跡が起こった」

今度は虎之助の目が、キラキラ輝く。

「公園の隅でしゃがみこんでる智乃を見つけた時は、いつもは信じてない神様に感謝したな」

「で、拾って帰っちゃったんだ?」

「正解!」

虎之助は目の前のテーブルをポンッと叩くと、私のことを指さす。

クイズ番組じゃないっていうの!



< 157 / 248 >

この作品をシェア

pagetop