敏腕社長に拾われました。

でも嬉しそうに笑う虎之助を見ていると、拾ってもらって良かったと思ってしまう。いや実際、拾ってもらって感謝してるけれど。

「会社辞めさせられたって聞いたから、心配してたんだ。だから気持ちよりも先に、体が動いてしまって。でもなんかよく考えると、俺って女々しいやつだよな」

「ホントにね」

落ち込む虎之助の体を、今度は私がギュッと抱きしめる。

「なあ、そこは嘘でも『そんなことないよ』とか言うんじゃないの?」

「私、嘘つけない体質なの」

クスッと笑うと、虎之助が「ちぇ、つまんない」と頬をふくらませた。

あと二ヶ月で三十になる大人が、頬をふくらませて怒るなんて……。

笑いのツボを押されてしまった私は笑いを堪えきれなくなって、涙を流して大笑い。

「虎之助に拾われて、本当に良かった」

「なんだよ、それ。笑いながらいう言葉か? いつもでもそうやって笑ってると……」

いきなり両肩を掴んだ虎之助が私の体をソファーに倒すと、その上に馬乗りになる。

「急になにするのよ!」

「第二ラウンド開始だ」

そう言うなり、私の首筋に顔をうずめて軽く歯を立てる。その刺激に私の頭のなかの回路はショートして、第二ラウンド開始のゴングが鳴り響いた。



< 158 / 248 >

この作品をシェア

pagetop