敏腕社長に拾われました。
でも嬉しそうに笑う虎之助を見ていると、拾ってもらって良かったと思ってしまう。いや実際、拾ってもらって感謝してるけれど。
「会社辞めさせられたって聞いたから、心配してたんだ。だから気持ちよりも先に、体が動いてしまって。でもなんかよく考えると、俺って女々しいやつだよな」
「ホントにね」
落ち込む虎之助の体を、今度は私がギュッと抱きしめる。
「なあ、そこは嘘でも『そんなことないよ』とか言うんじゃないの?」
「私、嘘つけない体質なの」
クスッと笑うと、虎之助が「ちぇ、つまんない」と頬をふくらませた。
あと二ヶ月で三十になる大人が、頬をふくらませて怒るなんて……。
笑いのツボを押されてしまった私は笑いを堪えきれなくなって、涙を流して大笑い。
「虎之助に拾われて、本当に良かった」
「なんだよ、それ。笑いながらいう言葉か? いつもでもそうやって笑ってると……」
いきなり両肩を掴んだ虎之助が私の体をソファーに倒すと、その上に馬乗りになる。
「急になにするのよ!」
「第二ラウンド開始だ」
そう言うなり、私の首筋に顔をうずめて軽く歯を立てる。その刺激に私の頭のなかの回路はショートして、第二ラウンド開始のゴングが鳴り響いた。