敏腕社長に拾われました。

「それがですね~。どうも社長に、結婚話が出てるみたいなんです」

「結婚!?」

私と宮口さんが同時に声を上げると、胡桃ちゃんは口を抑えて笑い出した。

「ふたり、気が合いますね~」

胡桃ちゃんの言葉に驚き宮口さんを見ると、一緒にされたくないとでも言うような顔をされた。

こっちだって、宮口さんと気が合うなんてまっぴらごめんだ……なんて言うことは出来ないから、ニコッと愛想笑いをしてみせる。

「それは、どこからの情報?」

虎之助の結婚となれば宮口さんも気になるのか、立ち上がると胡桃ちゃんに近づく。もちろん私だって、心中穏やかではない。

虎之助と付き合ってはいるけれど、まだ一度だって結婚の話が出たことはない。もちろんいずれはそうなるといいなぁ~とは思っていても、まだ付き合って一ヶ月。お互いまだ知らないこともあるし、ゆっくり愛を育みたい。

でも虎之助は、早く結婚したいとか? だからどこかでその思いをポロッと話しちゃって、それを聞いた誰かが勘違いして『虎之助社長、結婚!?』なんて話が広まってる?

それならいいんだけど……。

胸の中に、少しだけ残る不信感。

もしその結婚話の相手が、私じゃなかったとしたら……。

そんなことは絶対にないと思いながらも、一抹の不安を感じずにはいられなかった。



< 160 / 248 >

この作品をシェア

pagetop