敏腕社長に拾われました。

「でも相手が相手だけに、一筋縄ではいかないかも。それに永田さんまで絡んでるとしてら、それなりの心構えが必要になるわね」

「あの。その相手って、どなたなんですか?」

永田さんは、私と虎之助の関係を快く思っていない。それはわかっているけれど、宮口さんが言う“あの人”というのは一体誰でどんな人なのか。一筋縄ではいかないのなら、やっぱり知っておきたい。

「最近ウチの会社と提携した、ワイナリーの女社長。以前から取引はあったんだけど、提携してからは何かと言っては社長に会いに来ていて。私たちのことも自分の部下みたいに扱うから、実はちょっと困ってたのよね」

そう言って宮口さんがため息をつくもんだから、更に不安が増す。

だって気が強くてなんでも完璧にこなしてしまう宮口さんさえ、敵わないと言わんばかりにため息をつく相手って……。

会社まで会いに来られたら虎之助も無下には断れないだろうし、虎之助の手前宮口さんたちも雑には扱えないとは思うけれど。

相当の強者?

まだ見たこともない相手に私もため息をつくと、宮口さんが笑い出した。

「あなたでもため息つくのね」

「当たり前ですよ! 私のこと、どんな人間だと思ってます?」

「あの社長のそばにいるんだから、心臓に毛が生えてるとばかり思ってたわ。でも意外と可愛いところがあるのね」

宮口さんは椅子から立ち上げると、私の所まで来て肩に手を乗せる。

「心臓に毛が生えてるって、それちょっと言い過ぎじゃありません?」

立っている宮口さんに上目遣いでそう言えば、「そう?」と今まで見たことのない笑顔を見せた。



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