敏腕社長に拾われました。
「とにかく、もう少し情報を集めたほうが良さそうね。なにせ今の情報源は長坂さんだから、どこまでが本当だかわからないわ」
そうですね、と言いそうになって口をつぐむ。
あまり知りたくなかった情報だけど、早めにわかれば何かしら動くこともできる。それにこうして宮口さん近づけたことは、私にとって大きい。味方?とまではいかないかもしれないけれど、とても頼りになる存在だ。だから一応、胡桃ちゃんにも感謝かな。
「本人にも、それとなく聞いてみます」
「そうね。でも本人も知らないところで話が進んでるってことも考えられるし、慎重にね」
秘書室に戻ると、胡桃ちゃんが青い顔をして待っていた。
「もう、どこ行ってたんですか! 私ひとりにここをまかせるなんて、ふたりともどうかしてますよ」
胡桃ちゃん、それを自分で言う?
でもそこが胡桃ちゃんらしいというか。胡桃ちゃんには悪いけれど、彼女を見ていると虎之助の結婚話もデマじゃないかと思えてくるからクスリと笑いがこみ上げる。
そしてデスクに着くと、社長室と秘書室を繋ぐドアを見た。
今日の虎之助は、子会社の会議に永田さんと出席中。帰りは遅くなるから、会社には戻らず直帰するって言ってたよね。
今日はいつも以上に会いたいと言うか、早く顔が見たい。きっと単純な私はそれだけのことで、このモヤモヤとした気持ちが少しは晴れるはずだから……。