敏腕社長に拾われました。
なんて思っていたけれど、単純な私でもそううまく事が運ばない時があるわけで。
マンションに帰ると、難しい顔をした虎之助と相変わらず表情を変えない永田さんが、リビングで何やらミニ会議中。
その雰囲気になんとなく入りにくくてドアのところで聞き耳立てていると、突然ドアが開いてそのまま前に倒れこんだ。
「なあ智乃、そんなとこで何やってる。ガラス越しに丸見え」
虎之助、登場。
「あ……」
そうでした。採光部を大きく取ったリビングドアは、すりガラス越しでも私の姿がくっきり見える。あははは~と笑ってごまかし、その場から去ろうと反転しようとしたところで虎之助に左腕を取られた。
「どこ行くんだよ。智乃、晩飯は? 今から外に何か食いに行くけど、おまえも行く?」
「え?」
それは永田さんも一緒に?
と言いそうになって、その口を右手で塞ぐ。
「どうした?」
私の不可解な行動に虎之助は不思議そうな顔をしているけれど、虎之助越しに見える永田さんはほくそ笑んでいる?
きっと私の心の中なんて簡単に読める彼のこと、内心ではあざ笑ってるに違いない。面白くない私はフンッとそっぽを向くと、虎之助の手を借りて立ち上がった。