敏腕社長に拾われました。
●事実は小説よりも奇なり…でした
虎之助と永田さんが夕飯を食べに行った日から一週間。
あの日虎之助が帰ってきたのは、結局夜中。待ちくたびれて先に寝てしまった私は、虎之助に結婚話のことを聞けずじまいで今日を迎えている。
「今週末は、畠山乳業の創立記念パーティーだ。永田に朱音さんは出席だったよな?」
虎之助が聞くと、ふたりは頷いた。
畠山乳業といえば、高城専務がいる会社。先月の会食の時、『来月うちで開催する創業記念パーティーには、ぜひ君にも参加してほしいね』と言われたのを思い出す。
あの時は話の流れでそう言われたけれど、きっと社交辞令だよね。私みたいな新人の秘書が、顔を出すようなところじゃない。
私には関係のない話だと自分の仕事に専念するも、虎之助の口から続けて飛び出した言葉にキーボードを打つ手を止める。
「智乃は俺の同伴者として、出席するように」
「はい?」
ゆっくり顔を上げると、ニンマリ笑う虎之助と目が合った。
「社長、今なんて言いましたか?」
「智乃は俺の同伴者として……」
「はいはいはい、わかりました!」
虎之助の言葉を途中で止めると、ため息ひとつ項垂れる。
私の聞き間違いかと思ってけど、耳は正常に機能していたみたい。それにしても同伴者ってなに? なんで私が同伴者?