敏腕社長に拾われました。
でもね、私だって二十五歳の普通の女で、そうハッキリ言われちゃうと傷つくというか落ち込むというか。もうちょっとこう、物事をオブラートに包むってことできないのかなぁ。
ひとり手で何かを包むような仕草をしていると、頭上からハア~と大きなため息。
「……社長。やはりここは、宮口さんにお願いしては?」
うわ! 永田さんに、盛大に呆れられた……。
もうこれは絶対に私の出番はないと思っていたけれど、またしても虎之助が思いがけない言葉を放つ。
「でも今回は、高城専務直々のお誘いなんだよね。智乃と一緒に来てくれって」
これにはさすがの永田さんも、少し困った顔を見せた。
「そうですか。でも彼女はどうします?」
え? 彼女って?
何故か“ワイナリーの女社長”の文字が頭に浮かび、虎之助を見る。すると虎之助も私のことを見ていて、視線がぶつかるとその目を泳がせた。
「永田、そのことは後で話す。社長室に戻るぞ」
虎之助はそう言って、いつものように私の頭をポンとひと撫ですると社長室に入っていった。
いつもなら嬉しくなる虎之助のそんな仕草も、今日は少しも嬉しくない。
永田さんが言った彼女って、やっぱり宮口さんが教えてくれたワイナリーの女社長のことなんだろか。永田さんが彼女という言葉を出して、動揺を見せた虎之助に不信感が募る。