敏腕社長に拾われました。

「あ~さっぱりした。智乃、ビール」

お風呂あがりはビールと決っている虎之助がいつもの決まり文句を言うと、冷蔵庫から缶ビールをふたつ取り出す。ひとつはもちろん虎之助、もうひとつは自分用。これもいつものお決まりのパターンで、虎之助にひとつ渡すと私は隣に座って……となるはずが、今日はどうしても隣に座る気分になれなくて。向かいの席に行こうとしたら、腰をおもいっきりホールドされてしまう。

「捕まえた。どこいくの? 智乃は俺の隣でしょ?」

そのまま腰を引かれ虎之助の隣に座らされると、手にしていた缶ビールを取り上げられてソファーに押し倒された。

「ど、どうしたの、いきなり……」

突然押し倒された上に熱すぎるほどの目で見つめられて、その熱に耐えられなくなった私は目を逸らした。

「それはこっちのセリフ。智乃こそ、どうしたの? なんかさっきから、よそよそしくない?」

「そ、そうかなぁ。そんなことないと思うけど……」

無理やり顔を真正面に向けられて、当然虎之助と目が合ってしまった私は、ぎこちない笑みを顔に貼り付けた。

「俺、嘘つきは嫌いなんだけど。そんな嘘ついてると、今ここでヤッちゃうけど、いい?」

虎之助が嘘が嫌いっていうのはホント。でもいまここでヤッちゃうって言うのは、本当なのか嘘なのか……。彼の真意を図りかねる。



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