敏腕社長に拾われました。
でもしばらく見つめ合っていたら、虎之助の瞳の中にほんの少しの揺れを見つけた。
嘘が嫌いな虎之助に嘘をつかせているのは私だってことに気づくと、はぁと小さく息を吐く。
「虎之助、ごめん。ちょっと気になってる事があって」
「気になってること……。それって俺には話せないようなことなの?」
「それは……」
話せなくはないけれど。昼間の虎之助を思い出すと、どんな反応が返ってくるのか正直怖い。でもそれって、虎之助のことを信じてないってことだよね。ここで私が『虎之助には話せない』って言ったら、虎之助はどう思う?
それに、こんなの私らしくない。クヨクヨ考えこむのは性に合わないのに、虎之助相手だとどうも調子が狂う。
それだけ虎之助のことが好き……なのかな。
今まで何人かの男性とお付き合いしたけれど、こんな気持ちになるのは初めてで。付き合うようになってからまだ一ヶ月しか経っていないというのに、虎之助のいない生活なんて考えられなくなっている。
ゆっくり右手を上げて、虎之助の頬に触れてみる。指先に体温を感じて、それだけで今まで胸の奥でモヤモヤしていた気持ちが薄れていく。
「話す気になった? そんな顔してる」
虎之助はまだ頬に触れている私の指を取ると、それをパクッと咥えた。