敏腕社長に拾われました。
「ちょ、ちょっと虎之助、指……」
「ホントは智乃を食べたいけど今は話を聞くのが先だから、指だけ食べとく」
はぁ、そうですか……。
虎之助の理解し難い行為に呆れながらも、彼の嬉しそうな笑顔に胸はトクンと高鳴る。
私、ちゃんと虎之助に愛されてるよね? だからきっと大丈夫。
不安な心は今だけ隠して、虎之助の目をジッと見つめた。
「虎之助って、誰かと結婚するの?」
「は? な、なんだよいきなり……」
虎之助は私より先に目線を逸らすと、私から離れてソファーに深く座り込んだ。
やっぱり何か隠してる──
不安的中。疑惑が確信に変わると、私も起き上がって虎之助に攻め寄った。
「虎之助こそ、なんか態度おかしくない? 私も嘘付く人、嫌いなんだけど」
これ、さっきのお返し。
ちょっとだけ虎之助をいじめると、私の意図に気づいた虎之助が面白くなさそうに唇を尖らせた。
「嫌い……は困るな。わかった、話すよ。話すけど、おまえ何を知ってる?」
「何をって。会社で虎之助の結婚話がチラホラ出てて、その相手が……」
「相手が?」
「ワイナリーの女社長だって……」
そう言って今度は私が唇を尖らせると、その唇を虎之助がキュッと摘んだ。
「んんんんん~!(なにするの~!)」
「ん? だって智乃がひとりで勝手にむくれてるから、ちょっとお仕置き」
お仕置きって。ワイナリーの女社長が虎之助の結婚相手だって噂を聞いて、心がズキンと痛んでる私の気持ちをちょっとは察したらどうなの?