敏腕社長に拾われました。

瞳が涙で滲んで、虎之助の顔が歪んで見える。

「泣くなよ、俺がワルモノみたいだろ」

私の唇から指を離すと、今度は目元に唇を寄せる。目の縁から零れた涙をチュッとキスですくい取り、そのまま私を抱きしめた。

「虎之助なんて、ワルモノの十分でしょ?」

私もそれに応えるように、虎之助の背中に腕を回して力いっぱい抱きしめる。

「こんな優しいワルモノ、滅多にいないぞ」

「そうなの? じゃあ私はラッキー?」

「ああ、ラッキーだな」

お互い顔を見合わせて微笑み合うと、どちらからともなく唇を重ねる。でもそれは深くなることなく、すぐに離れた。

「そんなガッカリしたような顔するなよ。あとで嫌ってほどしてやる」

「だ、誰もガッカリしてないし……」

虎之助から少し離れると、ソファーの上で膝を抱えた。

動揺しちゃって、ガッカリしてるのが丸わかり。これじゃあ『もっとキスして』って言ってるみたいじゃない。恥ずかしい……。

膝小僧におでこをくっつけると、顔がジュワッと熱くなる。

「照れるな照れるな。そういう素直な智乃が、俺は好きなんだから」

虎之助はそう言って頭をポンポンと撫でたりするから、バカな私は真に受けてなお一層顔も体も熱くする。



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