敏腕社長に拾われました。

「わ、私で、いいの?」

泣いていて、上手く喋れない。

「おまえがいいの」

「あとで、後悔しても、知らないんだから……」

「後悔? そんなのするはずないだろ。俺がおまえのことをどれだけ好きか、まだ分かってないのか?」

虎之助はズイッと顔を寄せると、有無をいわさずキスをする。それはさっきしたキスとは違い、徐々に深さを増していく。

「……んっ……はぁ」

自分の口から甘い声が漏れだして、慌てて唇を離す。

「ダ、ダメだよ。まだ話が終わってない」

「ちぇ、ケチ」

ケ、ケチ!? 今の場合は勝手にキスした虎之助が悪いわけで、ケチなんて言われる筋合いない。でもまあキスは悪くなかったから、帳消しにしてあげてもいいかな。

なんて、心の中でだけ上目線でそう言うと、残っている涙を拭ってから虎之助を見据えた。

「じゃあ私は、今までどおり虎之助と一緒にいていいの?」

「当たり前でしょ。堂々と俺の彼女してればいいよ。あ、でも……」

「え、何?」

一緒にいてもいいって言っておいて、今更『やっぱり止めた』なんて言わないでよ?

マックスまで上がりかけたテンションが、一気に急降下。またしても涙の溜まりかけた目で虎之助を見上げると、おでこをツンと突かれた。



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