敏腕社長に拾われました。
「変なコトってなんだよ。ホント智乃って、ロマンの欠片もないよな」
ロマンの欠片? 何よ、それ。私はロマンより、マロンのほうが好きなんですけど。
なんて言ったら、虎之助に瞬殺されてしまう。
今までの恋愛はどちらかと言うと、私のほうが相手のことを好き過ぎる傾向にあったからか、あまり甘いセリフを言ってもらった記憶がない。もちろん『好き』とか『愛してる』なんて定番の言葉は言ってもらったことがあるけれど、『俺のそばにさえいてくれれば何もいらない』なんてセリフ、思い出しただけでキュン死にしてしまいそう!
でも虎之助のお陰で緊張は完全になくなったし、元気も出てきたかも。これで今日のパーティーは、なんとか乗り越えられそうだ。
きっとこれは、虎之助マジック?
私も虎之助さえそばにいてくれれば、なんだってやれそうな気がしてくる。虎之助のことを信じて、胸を張って前を向いていこう。
永田さんのことはちょっと心配だけど、宮口さんもいることだし。きっとなんとかなるよね。
そんなことを考えてる間に、車は目的地のホテルの近くまで来ていた。一度消えた緊張が、再び訪れる。でもそれは程良い緊張感で、虎之助のカッコいい横顔を見ると楽しみのほうが勝ってくるから面白い。
「どうした? 俺の顔に、なにかついてる?」
「え? あ、なにも……」
わあ、ビックリした。ジッと見つめすぎちゃったかな。
大慌てで顔をそらす。
「どうせ、『虎之助ってカッコいい~』とか思ってたんでしょ? まあ俺、間違いなくカッコいいし」
「お、思ってないし」
頭の中では『はい、正解!』と、ピンポーンと音がなる。