敏腕社長に拾われました。
「社長、お待ちしておりました」
ロービーで待っていた永田さんが虎之助の姿を見つけると、早足でやって来る。その後ろには、宮口さんも一緒だ。
「悪い。遅れたか?」
「いえ、大丈夫です。受付は済ませておきましたので、そのまま会場の方へ」
「わかった。ありがとう」
虎之助が会場へと歩き出し、永田さん宮口さんの後に私もついていこうとすると、立ち止まった宮口さんが振り返った。
「馬子にも衣装ね。ちゃんとした格好してれば、あなたもそれなりの秘書に見えるじゃない」
「宮口さん。それって何気に、意地悪言ってますよね?」
「そうかしら? それくらい気合入れていかないと、勝てないわよ」
「え?」
勝てない? 勝てないって誰に?
宮口さんの言っていることの意味がわからなくて、キョトンとしてしまう。
すると私に近づいた宮口さんが、耳元で囁いた。
「本間詩織、もう来てるわよ」
「えぇー!?」
ホテル内いっぱいに響いた私の大声に、虎之助と永田さんも振り返った。
「もう早瀬さん、声が大きい!」
宮口さんに怒られて。
「智乃、どうした?」
虎之助には心配されて。
「……まったく」
永田さんには呆れ顔をされてしまった。