敏腕社長に拾われました。
「スゴい……」
友達の結婚式には出たことがあっても、会社の創立記念パーティーになんて顔を出したことのない私は、入り口で立ち止まりそのスケール感に圧倒される。人で溢れかえった会場内は、みんなそれぞれ挨拶に余念がない。
見るからに企業のトップであろう人たちの中に入っていく虎之助もまた、その姿は堂々としていて全く引けをとらない。
「虎之助って、やっぱり社長なんだ……」
思わずつぶやいたアホな言葉に、永田さんがすかさず反応。
「当たり前だ。だから前から言っているだろう、おまえには似合わない相手だと」
だからさっさと帰れ──
と言わんばかりに永田さんは、冷たい視線を私に向けた。
そんなこと、言われなくたってわかってる。虎之助には強い熱意やもあれば、謙虚さや素直さも持ち合わせている。何より社員を大切にする姿には、心打たれるものがあった。
そんな誰よりも社長にふさわしい虎之助の隣に、私が不釣合いだってことは百も承知。
だけど虎之助は言ってくれた。俺が結婚したいのは私だけだって、智乃がずっと俺のそばにさえいてくれれば何もいらないって……。
あの言葉は嘘じゃない、虎之助の本当の気持ちだって信じてる。だからどんなことがあってもへこたれないし負けないんだから。
私も虎之助の隣で、一緒に頑張って行きたい。そう決意を新たにすると、会場の中へと足を踏み入れた。