敏腕社長に拾われました。
畠山乳業の創立記念の催しは、式典の後にパーティーという流れになっていた。畠山乳業の社長の意向で、招待する皆さんに自由な雰囲気の中楽しんでもらうためにビュッフェ形式の立食パーティーの会場は、式典も終わりみんな自由に歓談を楽しみながら飲食を始めている。
「早瀬さん?」
私も宮口さんの後について前菜を何品か取り分けていると、後ろから誰かに呼び止められた。その声に振り向くと、笑顔の高城常務が立っていた。
「高城常務、お久しぶりでございます。ご招待頂いたのに挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした」
「いや、私もいろいろ忙しくてね。君を見つけるのに苦労した。料理は楽しんでもらえているかな?」
私が食べ物に目がないことを知っている高城常務は茶目っ気たっぷりにそう言うと、私が手にしている皿を覗きこんだ。
はい、もちろん。あ、高城常務の分もお取りしましょうか?」
自分の皿をビュッフェ台に置くと、もう一枚皿を取ろうと手を伸ばす。すると同じタイミングで、皿に手を伸ばした人とその手が重なる。
「俺の分は?」
ぶっきらぼうな声に顔を上げれば、面白くなさそうな顔をした虎之助がいた。
「虎之助!? あ……すみません、社長」
ついいつもの癖で名前を呼んでしまい、高城常務に笑われてしまう。
「早瀬さんは相変わらず、そそっかしいようだ。ところで虎之助くん、君結婚するんだって? なんでさっき挨拶を交わした時に、教えてくれなかった?」
「高城常務、その話はどこで……」
「社長、私がお話しました」
虎之助と高城常務の話に割って入って来たのは、もちろん永田さん。そしてその後ろには、清楚で大人の雰囲気漂う本間詩織さんが立っていた。