敏腕社長に拾われました。
「とにかく今のキミの状況を、全部俺に話してくれない? お金の話はそれからだ」
虎之助はそう言うと繋いでいる手を離して腕を組み、ソファーの背に体を預ける。
私も姿勢を正すと、虎之助に向き直った。
そして話すこと二十分。
私の話を聞いた虎之助が、ふ~と息を吐く。
「早瀬智乃、二十五歳。へ~、もっと若いのかと思ってたよ。ちゃんとお肌の手入れしてるんだね」
そう言って私に伸ばしかけた手を、パシッと払いのける。
「今、お肌は関係ないです」
「智乃は厳しいね」
ハハハと笑うと、もういつもの虎之助スマイル。
っていうか、今私の事『智乃』って呼んだよね? いきなり呼び捨てって、どういうこと?
ジロッと睨みを効かせても、虎之助は至って冷静。
まあ今は、私のほうが弱い立場だし。文句を言って虎之助の機嫌を損ねるのは、得策じゃない
呼び捨てにされた件は放っておいて、私の話を全部聞いた虎之助がどう出るか、その答えを待った。