敏腕社長に拾われました。
○合縁奇縁
宮口さんが用意してくれたホテルにチェックインすると、部屋の大きな窓から外を眺める。ここから虎之助のマンションは見えないけれど、虎之助かいるであろうその方向を見ると、なんだか心が温かくなった。
「こんなに好きなのに、自分から離れようなんて……」
小さな胸にそっと手を当てると、心臓がトクンと高鳴った。
「虎之助に会いたいな」
口からポロリと零れた本心は、私の気持ちを動かせる。
ベッドの上に置いてあるバッグに手を伸ばすと、中からスマホを取り出した。切ってあったスマホの電源を入れると、着信やメールが何件も入っている。
その相手が誰なのか……。
確認するまでもない。
「虎之助だよね」
クスッと笑みが漏れて、でもすぐに真顔に戻す。
時間を追うごとに虎之助に会いたい気持ちは膨らんで、今すぐにでも彼の元へと飛んでいきたい。虎之助に、『私はここにいるよ』と伝えたい。勝手にいなくなって電話にも出ない私のことを、虎之助はきっと怒っているはず。だから早く『ごめんなさい』と謝りたい。
いろんなことが、頭の中を駆け巡るけれど……。
でも、まずその前に、私にはやらなきゃいけないことがある。
詩織さんと、決着をつける──