敏腕社長に拾われました。
「智乃の話は分かった。で結論から言うと、やっぱりお金は貸せない」
「ですよね……」
ちょっとは期待したんだけど、やっぱりダメかぁ……。
途端に不安が押し寄せてきて、泣きそうな気持ちを抑えるように、膝においた手をギュッと握る。
これで一文無しに逆戻り。お金がなくちゃ実家にも帰れないし。最後の最後、電車賃もダメ?って聞いてみる?
一か八かと俯いていた顔を上げ口を開こうとしたら、その前に虎之助が言葉を放った。
「智乃、まだ話は終わってない。お金は貸せないけど、日常に困らない生活は提供してあげる」
「日常に困らない生活?」
それってどういうこと? 日常に困らないって言うことは、衣食住を与えてくれるってこと?
よく意味が理解できなくて、虎之助の顔をじっと見つめる。
「その顔、いいね。実に面白い」
なんかどこかで聞いたようなセリフ。
「人の顔のことは、放っといてくだい。一体どういうことですか?」
「早い話が、ここに三食昼寝付きで住まわせてあげるから、俺の会社で働けってこと」
「断る!」
何いってんの、この人。ここに住め? 絶対にあり得ない!
好きな人とならともかく、今日知り合ったばっかだよ? そんな人と暮らせるほど、私はあばずれな女じゃない!