敏腕社長に拾われました。

「虎之助さん。着いた早々そんなに責めたら、智乃さんが可哀想よ。とりあえず座ったらどう?」

詩織さんがそう促すと、虎之助も渋々席についた。

個室に、虎之助と詩織さんと私の三人。このメンツを見たら、宮口さんならなんて言うかしら……。

誰の顔も見ることができずに俯いていると、また虎之助のため息が耳に届いた。

「もうわかったからさ。とりあえず顔、ちゃんと見せてくれない?」

虎之助には珍しいちょっと寂しそうな声が気になってゆっくり顔を上げると、すぐに彼と目が合った。でもさっき聞いた声とは裏腹に、いつものちょっと偉そうな虎之助の顔。

さっきの声は、なんだったの? 私の勘違い?

ちょっと騙された感に口をとがらせると、虎之助の腕がすっと伸びてきて私の頭をなでた。

「元気そうで良かった。ホント、昨日帰ったら部屋にいなくてマジ焦った」

虎之助はホッとしたように息をつくと、おもむろに頭から手を離す。

詩織さんが見てるのに……。

と思いながらも、虎之助の『マジ焦った』のひと言に顔がほころんでしまう。

昨日の夜から今朝にかけてスマホに着信やメールが入っていたから、多少は心配してくれていると思っていたけど。まさか、そこまでとは。

申し訳ない気持ちが胸に広がってきて、小声で「ごめんなさい」と呟く。



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