敏腕社長に拾われました。
「まあ顔見たら安心したし、謝るってことは反省してるってことでしょ?」
そう聞きながら顔を覗きこむ虎之助に、上目遣いに「うん」頷く。
私のしぐさに満足したのか虎之助は、相変わらずちょっと偉そうな顔を見せると、椅子に深く座り直してから詩織さんの方に向き直した。
「詩織さん。智乃が迷惑をかけたようで、すみませんでした」
虎之助が頭を下げると、私も追うように頭を下げる。
そうだよね。いきなり来て『言いたいことがある』なんて、忙しい詩織さんにしてみたら迷惑な話だ。もし私が逆の立場だったら、会わずに追い返していたかもしれない。しかも詩織さんは嫌な顔ひとつしないで、こんな場まで用意してくれて……。
時間が経つにつれ申し訳ない気持ちが膨らんできて、私は下げた頭を上げられないでいた。
「智乃さん、頭を上げて。あたなは何も悪くない。謝るのは、私の方だから」
謝るのは私の方? どうして詩織さんが謝らないといけないわけ?
そんなことありえないと頭を上げると、今度は詩織さんのほうが俯いている。
「いやだ、なんで詩織さんがそんなこと……」
顔を上げてください──
そう言おうとしたけれど、詩織さんの「あたなを傷つけるようなことを言って、ごめんなさい」と呟く声に言葉を失う。