敏腕社長に拾われました。

私を傷つける?

確かに畠山乳業の創立記念パーティーのときは、詩織さんの言葉ひとつひとつに傷ついた。『虎之助さんの前から消えてさえくれれば……』の言葉には、何も言い返せない自分がいた。

でも、それでも、虎之助の前から逃げ出したのは、自分に負けてしまった自分の選択。何も詩織さんが謝ることじゃないのに……。

何も言えず俯いたままの詩織さんを見つめていると、虎之助が「詩織さん」と彼女の肩に手を置く。虎之助のその行為に詩織さんはピクっと肩を震わせると、ゆっくりと顔を上げた。

「畠山乳業の創立記念パーティーがあった日。よく考えてみたら、あの日から智乃の様子がおかしかった。詩織さんが智乃に謝るってことは、あの時に何かあったってことだよね? 話してくれる?」

虎之助のやんわりとした聞き方に詩織さんが頷くと、創立記念パーティーの時のことをゆっくりと話しだした。

「そう、そんなことが……」

詩織さんが全部話し終えると、虎之助は大きく息を吐く。そして詩織さんに向かい合うと、いきなり頭を下げた。



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