敏腕社長に拾われました。
え? なんで虎之助が?
虎之助の行動がよく分からないまま、彼のことをじっと見つめる。
「俺がもっとしっかりした態度を取るべきだった。詩織さんとは結婚できないと永田には話していたけれど、詩織さんとはちゃんと直接話をしたわけではなかったし。俺のそんな態度が、詩織さんに創立記念パーティーでのことを引き起こさせてしまった。本当に申し訳ない」
虎之助の声が震えているのが分かる。虎之助にも虎之助の事情があってしたことなんだろう。でもその声から深く反省しているのが伝わり、私までなんとも言えない気持ちなる。
それは詩織さんも同じだったようで、今度は逆に詩織さんが虎之助の肩に手を添えると小さく揺さぶった。
「虎之助さん、あなたが謝ることじゃないでしょ。頭を上げて」
詩織さんは少し申し訳無さげに笑うと、虎之助の肩から手を下ろす。と同時に虎之助が顔を上げると、その顔は少しだけ安堵の表情を見せていた。
「確かに虎之助さんと直接お話をしたわけではなかったけれど、あなたの気持ちはちゃんと届いてましたよ。それにこの結婚の話は、私の方から持ちかけた話。あなたの気持ちも考えないで、永田さんを巻き込んで一方的に進めてしまった私の過失です」
「でも……」
詩織さんの話を聞いても納得できないのか虎之助が言葉をはさもうとして、それを詩織さんが大きく首を振って止めた。