敏腕社長に拾われました。
悲しくて涙がこぼれそうになるのを鼻をすすって押しとどめていると、車が高速のサービスエリアに入っていくのに気づく。
虎之助、トイレ休憩でもするのかなぁ。
なんてのんきに考えていたら、車はサービスエリアの建物からかなり離れた、他の車がほとんど停まっていない駐車スペースに停まった。
え、なんでこんなところに?
「とらのす……」
おもわず口から出た彼の名前は、虎之助の唇に塞がれて最後まで紡がれることはなく。時々角度を変えるたび深くなる口づけに、唇から漏れる甘い吐息へと変貌を遂げた。
「んっ……」
周りに他の車が停まっていないとはいえ、今はまだ明るい時間。誰かに見られたら恥ずかしいと思う反面、それを拒否しないどころかもっともっとと虎之助の首に腕をまわし、彼を欲しがる自分に驚いてしまう。
「智乃って、こんなにエッチだったんだ」
唇を少しだけ離すと、魅惑的な瞳で語りかける。でもその“エッチ“のひと言で我に返り、慌てて虎之助から離れた。
「エ、エッチじゃないし。虎之助の方からキス、してきたんだし」
虎之助がいきなり大人なキスをしてくるから、私どうかしちゃったんだ! そうだ、そうに決まってる!!
動揺丸見えで喋り方がおかしくなってしまうと、それを見ていた虎之助がぷぷっと吹き出した。