敏腕社長に拾われました。
「智乃と、智乃の永遠の未来が欲しい」
虎之助はそう言うと、ポカンと開いたままの私の唇を奪う。でもそれは一瞬で離れ、優しい瞳で私のことを見つめた。
「それって……」
「俺が結婚したいのは智乃しかいないって言ったけど、ちゃんとしたプロポーズはまだだったからな」
「うん……」
「智乃、俺と結婚してください。いや、俺と結婚しろ。必ず幸せにしてやる」
「……結婚しろって」
こんな時まで、虎之助らしいというか偉そうというか。
普通なら感動の涙のひとつでも、あふれるシーンなんだろうけれど。相変わらずの虎之助に、笑いが込み上げてきてしまう。
「何笑ってるんだよ」
でも虎之助としてはバシッと決めたつもりだったらしく、私の大笑いにちょっと不服顔。
「ごめん。虎之助、大好き。これからも、よろしくお願いします」
今度は自分から虎之助に抱きつくと、その頬にチュッとキスをした。私の思いがけない行動に、虎之助の頬がほんのり赤く染まる。
「よ、よーし! さっさと帰って、腹いっぱい食うぞ!」
照れ隠しなのか、虎之助のテンションがおかしい。
「え? 何を?」
「決まってるだろ、智乃をだよ」
虎之助から甘く囁かれた言葉は、私をも赤く染めてしまった。
そして高速道路を猛スピードで走る車の中、恐怖からキャーキャー騒いでいたのは言うまでもない。