敏腕社長に拾われました。
「おはようございます」
虎之助が山梨まで迎えに来てくれた日から二日後の月曜日。出社すると、宮口さんが私のもとに走ってやってきた。
「早瀬さん、おはよう。ちょっと、うまくいって良かったわね」
宮口さんに肩をツンっと押され、バランスを崩しながらも頭を掻く。
「えっと、はい。金曜日の夜は、本当にすみませんでした」
細かいことまではまだ話していないけれど、宮口さんには少し落ち着いてから電話をした。きっと近々飲みに付き合わされて根掘り葉掘り聞かれると思うけれど、それもきっと楽しい時間になりそう。
「ちょっとちょっと~、そこのお二人さん。何をコソコソ話してるんですかぁ。私も混ぜてくださいよぉ~」
と何も知らない胡桃ちゃんが唇を尖らせている姿を見て宮口さんとふたりで笑っていると、社長室と繋がるドアが開いた。
「みんな、おはよう。ちょっと話があるから、こっちに来て」
そこから顔を出したのは虎之助で、宮口さんと胡桃ちゃんは何事かとキョトンとしていた。
でも私は、今からなにが起きるのか知っている。
虎之助と目が合うと、ふたりにしかわからないように微笑み合った。