敏腕社長に拾われました。
社長室に入ると永田さんが機嫌悪そうに立っていて、私に気づくとギロッと睨みをかます。きっともう虎之助から話を聞いているんだろう。
こうなることは予想していたけれど、永田さん怖すぎる……。
スッと目を逸らし知らんぷりを決め込むと、それを見ていた虎之助が楽しそうに肩を震わせていた。
虎之助ったら人が悪い。誰のせいで、こうなってると思ってるのよ!
心の中で文句を言うと、ため息をつく。
「社長、話ってなんですか?」
しびれを切らした胡桃ちゃんが虎之助に手を上げて質問すると、社長室の空気が軽やかになる。
「あぁ悪い。早瀬、こっちへ」
「はい」
虎之助に呼ばれて彼の隣に立ち、緊張を抑えるように深呼吸をひとつ。
「仕事の前に私事で申し訳ないが、俺は早瀬智乃と結婚することにした」
分かっていたこととはいえ、こうして言葉で伝えられると、みんながどう思うのか緊張する。
永田さんを見れば、まだ納得出来ないのか大きくため息をついている。宮口さんはといえば、『良かったわね』と優しそうな視線。何も知らなかった胡桃ちゃんは、「ええぇー!?」と素っ頓狂な声を上げて驚きようは半端ない。