敏腕社長に拾われました。
「と言っても、まだ結婚式の日取りも何も決まってない。みんなにはまたいろいろと世話をかけると思うが、よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
虎之助の後に続いて頭を下げると、拍手の音が耳に届いた。
顔を上げてみれば、宮口さんと胡桃ちゃん、そして永田さんまでもが拍手をしてくれている。
「虎之助……」
目に涙を浮かべて虎之助を見上げると、彼も少し驚きながらも嬉しそうに笑っていた。
今日のことを考えるとなかなか寝付けなくて、ちょっと寝不足。そのせいで化粧ノリも悪いし、髪型もちっとも決まらなかった。
こんな状態で私大丈夫なの?と鏡の前でにらめっこしていたら、それを見ていた虎之助が「笑顔」とひと言。ぽんっと頭を撫でられると、あっという間に肩の力が抜けていた。
恋愛って、本当に不思議。普段は偉そうで何でも上から目線。勝手なことばかり言う男なんて嫌いなはずなのに、どうして心を捕らわれてしまうのか。
あばたもえくぼ──
好きになってしまえば、その人の欠点すら愛おしく思えてしまう。人間の恋愛心理とは、どこでどうなるのかまったく分からないから面白い。
虎之助に拾われて、心を奪われて、今私は彼に抱き寄せられている。
「ずっと一緒にいてね」
「当たり前だ。一生離さないから覚悟しとけよ」
覚悟なんてもう出来てる。
この力強い腕に抱かれていれば、この先どんなことが起きても絶対に大丈夫って、そう思えるから……。
おわり