敏腕社長に拾われました。

「虎之助って、ホントに社長さん?」

「なんだよ、それ」

「だって部屋が汚すぎる」

「放っとけ。部屋が汚いのと社長は関係ないだろ」

虎之助はそう言って、照れたように顔をそむけた。

なんやかんや偉そうなこと言ってても、中身は普通の男ってことか。

少し顔を赤くする虎之助がちょっとだけ可愛く思えて、クスッと笑ってしまう。

「智乃、また笑ったな。罰として、部屋の掃除を命じる。それから、料理と洗濯も智乃の仕事だ」

「えぇっ!? なんで私が、そんなことしないといけないの? 三食昼寝付きって言ったのは、虎之助じゃない!」

「そうだよ。でも俺が作るとも言ってないし、タダでここで暮らすんだから当然のことだろ」

「なによ、偉そうに」

「まあ、智乃よりは偉いよな」

今度は虎之助が勝ち誇った顔を見せると、ソファーに大きくふんぞり返る。

な、なんか、すっごく悔しいんですけど。

でも立場の弱い身としては、ここは我慢我慢。仕事をしてお金が貯まるまでは、ここに住まわせてもらわなきゃいけないからね。



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