敏腕社長に拾われました。

「もしかして虎之助、野菜が苦手とか?」

もしそうだったら、これから野菜嫌いを克服させなくっちゃ。

だって虎之助は社長さんなんだし、トップに立つものとして健康な体で頑張ってもらわなくちゃ。

なんて。私は虎之助の彼女でもなんでもないんだから、そんなこと考えることないか。と言うより、もし彼女だとしても、こういうところが鬱陶しいのかな。


智乃、おまえの愛情は重い。いや、ウザい──


浩輔に言われた言葉が脳裏に浮かび、チクチク心が痛んではぁ~とため息漏らす。

「おはよう。何朝から、ため息ついてるの?」

いきなり後ろから声を掛けられ驚いて振り向くと、寝起きの虎之助が立っていた。

「あ、おはようございます。別になんでもありません。っていうか、その格好もう少しなんとかなりませんか?」

Tシャツにボクサーパンツ姿の虎之助から慌てて目線をそらすと、今度は違う意味でため息をつく。

「ここ俺の家。どんな格好しようと、俺の勝手でしょ」

「それはそうだけど……」

なんとなく目のやり場に困るというか、こっ恥ずかしいというか。素っ裸じゃないんだから、そこまで敏感に反応することはないんだけれど。



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