敏腕社長に拾われました。
身長は180センチ以上あるから、服を着ている時はヒョロッともやしみたいな体してるのかと思ってたけど。意外とたくましい体をしていることに戸惑ってしまう。
なに意識してるのよ! 相手は虎之助だよ? お金が貯まるまでの同居人。それ以上でもそれ以下でもないんだから。
ダイニングテーブルの上を簡単に片付けて、何事もなかったかのように出来上がったオムレツを運ぶ。
「調理台の上のロールパン、食べてもいいんですよね?」
虎之助の方を振り向かずに聞いて、キッチンに戻ろうとしたら……。
「ねぇ、これって智乃が作ったの?」
腕を捕まれ引っ張られ、あれよあれよと言う間に虎之助の腕の中。目の真ん前には虎之助のイケメン顔があって、あまりの男っぷりに目眩を起こしそう。
「な、なんですか、この体勢は?」
「ん? 偶然」
偶然かい! 偶然で、こんな至近距離に顔を寄せるんかい!
遊ばれてる。これ絶対、虎之助にからかわれてる。
「じゃあ、離して下さい!」
「うん、分かった」
虎之助は両手をパッと離すと、私は体のバランスを崩してその場で尻もちをついてしまった。
「ちょっと、何もいきなり離すことないでしょ!」
「だって智乃が離してって言うから」
なんて笑いながら言うけれど。尻もちをついて痛がっている私に手を差し、その体を引き上げた。
なんですか、このプレーは? 意地悪なのか優しいのか、まったくもって分からない。