敏腕社長に拾われました。

でも虎之助は楽しそうに笑っていて、怒っていいのか何なのか。

調子狂うんですけど。

「もう、こんな意地悪ばかりしてたら、コーヒー淹れてあげませんよ」

「何言ってるの。食事作りも智乃の仕事なんだから、俺にコーヒー淹れるのは当たり前でしょ」

「うぅ……」

顔は笑っていても、心の中は鬼。言うことが、いちいち頭にくる。

コーヒーを淹れながら虎之助をチラッと見ると、「いただきます」と私が作ったオムレツを一口頬張った。

「うん、旨い! 智乃、料理の天才!」

「いやいや、それほどでも……」

だってそれ、オムレツだよ? 誰が作っても、味に大した遜色ないんじゃないかな。

でも虎之助は本当に美味しそうにオムレツを食べていて、あっという間に平らげてしまった。

「これから毎朝オムレツだね。智乃のオムレツ最高!」

虎之助は私に向って親指を立ててみせると、笑顔でウインクしてみせる。

ちょっと嬉しいかも……。

浩輔もたまに美味しいとは言ってくれたけど、あまり表情に出す人じゃなかったから。

「私の分も食べる?」

「え、いいの? 食べる食べる」

オムレツの乗った皿を虎之助に差し出すと、もう一度「いただきます」と言って食べ始めた。

虎之助のことはまだ分からないことだらけだけど、彼が私の今後を左右する? そして彼が入れば、私の未来は明るいものになる……そう思わずにはいられなかった。



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