敏腕社長に拾われました。
そっか、私、虎之助の秘書として働くんだ。
秘書……秘書?
「えぇ~、秘書!?」
半径100メートルまで届きそうな大声で叫ぶと、慌てて虎之助の元に駆け寄る。
「虎之助の秘書をするなんて、私聞いてないんだけど」
「うん、言ってない」
「無理、秘書なんて絶対に無理!」
クビになったなった会社じゃ、営業の経験しかしたことがない。しかも下っ端の下っ端。少し慣れてきたところで大きなミスをしてしまったから、クビになって現在に至っているというのに……。
「無理じゃない。まあ女性の先輩秘書もいるし、基本は俺の小間使い?的なことをしてもらうつもりだから」
小間使い。それって、ご主人様の身の回りの世話をする召使いってこと?
あぁ~、それなら納得。
……って、また納得してどうすんのよ!
俺の会社で働いてもらうなんて言うから、私はてっきり事務員か何かだと思っていたのに。
秘書=小間使い?
一体何をさせられるんだろう……。
それに、女性の先輩秘書? その響き、なんだか怖いんですけど。
ほらドラマの中でもよくあるじゃない。先輩お局秘書にイジメられて……とか。
そんなの、まっぴらごめん。私は穏やかに仕事がしたいというのに。
困ったとひとり悩んでいても、虎之助は店員さんと楽しそうに話をしながら私のスーツを選んでるし。
一寸先は闇。この先どうなるのか……。不安しかない。