敏腕社長に拾われました。
 *

結局虎之助が選んだスーツを三着購入すると、その中の一つ、淡いピンクのスーツに着替える。

「よくお似合いです」

可愛らしい店員が、ニコッと微笑む。

ホントかよ。誰にでも、そう言ってんでしょ?

顔は笑顔で。でも心の中では悪態をつくと、これまた虎之助に買ってもらったパンプスを履いた。

「智乃、よく似あってる。馬子にも衣装って感じ」

馬子にも衣装って、それ、褒め言葉じゃないんですけど。

分かって言ってるのか冗談なのか。どっちにしてもホント、虎之助と一緒にいると疲れる。

でも今の私は、もう虎之助に反抗する気力も残っていない。

「そろそろ会社に行きませんか?」

面倒なことは、さっさと済ませたい。

「おっと、忘れてた」

マジですか……。いいですね、社長さんはのんびりしていらして。

店員さんからスーツが入ったショッパーを受け取ると、虎之助の待つ車に乗り込む。

「じゃ、会社に向かうけど。会社を見ても、驚かないでね」

「は?」

どういう意味? それって、驚くような会社ってこと?



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