敏腕社長に拾われました。

まさかやっぱり、いかがわしい会社? それとも、度肝を抜くようなビッグな会社?

どちらにしても、ここは心の準備が必要なようだ。

気を引き締め緊張した面持ちで助手席に座っていると、しばらくして見覚えがある建物が見えてきた。

え? まさか……。

「あれが俺の会社」

虎之助が、そう一言。

嘘でしょ……。あの会社が、虎之助の会社?

突然のことに、頭がついていかない。

だっていま眼の前にあるのは、私が会社をクビになる理由を作ってしまった会社。すなわち、私が迷惑を掛けてしまった会社だ。ということは……。

「もしかして、虎之助は私のことを知ってた?」

なんとなくそんな予感……。と言うか、昨日私が『初対面』って言葉を出した時、一瞬間があったのは、きっとそういうこと。

「さあ、どうだろう」

虎之助はそう言うと、私から視線をそらす。

知ってたに決まってる。だってここに来る前『会社を見ても驚かないでね』って言ってたからね。
でもこれが一体、どういうことなのか。



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