敏腕社長に拾われました。

今思えば、不思議なことはたくさんある。

虎之助は、なんで私をあの公園で見つけたのか。あれは偶然? それとも必然?

私のことを知っていた上で拾い、家に連れて帰る。そして事情を聞くと、日常生活と仕事を与えてくれた。

……話がうますぎる。

これって初めから仕組まれてたことじゃない? 私はまんまと、虎之助の手のひらで踊らされていた?

虎之助から目一杯距離を取り、不信感いっぱいの目で虎之助を見る。

「虎之助は私のこと、どこまで知ってたの?」

私の態度に観念したのか、虎之助は諦めたように肩を落とした。

「名前とか会社をクビになったこととか」

「やっぱり……」

「俺の会社に迷惑を掛けた。でもその穴をなんとか埋めようと、一生懸命動いてくれたこととか」

「え?」

なんで社長の虎之助が、そんなことを知ってるの?

確かに私は、自分が犯したミスを取り戻そうと頑張ったつもり。でも虎之助の会社の課長さんには、頭ごなしに怒鳴られて相手にさえしてもらえなかった。上司と謝罪に行った時も社長さんに会うことはできなかったし、私の名前までは上に上がってなかったと思う。

その後、勤めてた会社にも“使えない者”というレッテルを貼られてしまい、そのままお払い箱。



< 38 / 248 >

この作品をシェア

pagetop