敏腕社長に拾われました。
エレベーターホールで待っている虎之助に名前を呼ばれると、受付の女性の顔色が一変。『誰よ、あんた?』とでも言っているかのような目つきに、ゾゾッと身体が震える。
なんですか、その恐ろしい顔は。さっき虎之助に見せた顔と大違いじゃない。
私のことを彼女か何かと勘違いしているのか、かなり敵対する目でジロッと見られてる気がする。
ここは笑顔で乗り切ろうと愛想笑いをしたけれど、フンッと顔をそむけられてハイ終了。
気にはなるのに、相手にされない私って……。
あ~もう! なんで私が、こんな思いしなくちゃいけないの? どれもこれも、ぜ~んぶ虎之助が悪い!
足早に虎之助に近づくと、受付の女性から見えない場所に身体を押す。
「何するんだよ」
「ちょっと、会社内で名前呼ばないでくれる? あの女性に、ジロッと睨まれちゃったじゃない」
「それって俺のせい?」
はあ? この期に及んで、そんなとぼけたこと言う? 虎之助のせいじゃなかったら、誰のせいだと言うつもり? まだ会社に入ったところでこの調子じゃ、先が思いやられるよ。
それでも虎之助についていくしかないんだと諦めると、彼と一緒にエレベーターに乗り込んだ。