敏腕社長に拾われました。

男性は冷ややかな目でちろっとこっちを見るし、女の子の目は興味津々。そして、デスクに座っている女性を見たら……。

顔は穏やかに笑っているのに、目が全く笑っていない。それどころか敵意メラメラモードに変わってしまったのか、穏やかな笑みが徐々に不敵なものに変わってきた。

こ、これは、昼ドラ臭がプンプン臭ってきたような気が。

「とらの……いえ、社長。そんな疑惑を生むような言い方、やめていただけませんか?」

部屋の空気を一掃しようと、慌てて否定してみたんだけど。一掃どころか、昼ドラ臭はどんどん濃くなっていくようで……。

ああ~どうしたらいいのよ。

ねえ虎之助! アンタが蒔いた種なんだから、アンタがどうにかしなさいよ!

目でそう訴えても、虎之助はそんな私に気づくことなく。

「ちょっと人事課に行ってくるわ」

と一言残して、秘書室を出て行ってしまった。

嘘でしょ? 今この状態で、私一人をここに残して行っちゃう?

カムバーック、虎之助―!!

心の中で叫んだ声は、当たり前ながら虎之助に届くわけもなく、私はひとり残されがっくり肩を落とした。



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