敏腕社長に拾われました。
お願いだから、時間よとまれ!
魔法も使えないのに、そんなことを思うなんて。相当追い込まれてる証拠。そして時計はというと、当たり前のことながら止まることなく、針が動く音を鳴らし続けている。
「早瀬さん、でしたよね?」
突然メガネの男性に声を掛けられて、心臓が飛び跳ねる。
「あ、はい!」
「はじめまして。社長の第一秘書をしています、永田悠大(ながたゆうだい)です。こちらは秘書の宮口朱音(みやぐちあかね)、あちらの女性が秘書補佐の……」
「長坂胡桃(ながさかくるみ)、二十二歳でーす。よろしくね」
第一秘書の永田さんが話をしている途中で割り込んできたのが、さっき私に歳を聞いた女の子。秘書室には似つかわしくない感じだけど、この真面目を絵に描いたような永田さんの話を途中で止めてしまうなんて……。
長坂胡桃、恐るべし。
だけどもっと怖いのが、虎之助がいなくなってから私のことをずっと睨んでる、宮口朱音。
もうホントに、最初の印象と全く違うんですけど。と言うか、正反対。
優しそうに弧を描いていた目はキツくつり上がり、その視線は冷たく私に突き刺さる。
私が何をしたっていうの?
もういい加減にして!
頭の中で、自分の頭を抱え込む。