敏腕社長に拾われました。
「早瀬さん、社長はじきに戻ってくるでしょ。そこに掛けてお待ちください」
永田さんが手を向けたのは、ひとつ空いているデスク。「ありがとうございます」と頭を下げ、椅子にチョコンと腰掛けた。
と同時に宮口さんが席を立ち、奥の部屋に消えていく。
どこに行ったんだろう。
気にはなるけれど身体に刺さる視線が無くなったことにちょっと良かった。
そうホッとしたのもつかの間、奥の部屋から宮口さんが出てきて、私の前にコーヒーカップを置く。そしてもうひとつカップを置くと、自分の椅子を引っ張ってきて私の横に陣取った。
「何話すんですかー。私も混ぜてくださいよー」
反対側には長坂胡桃。
いきなり手強そうな相手ふたりに挟まれて、もはや背水の陣。
これから一体、何が始まろうとしているのか。何となく分かるだけに、ちょっと面倒くさい。
「私はなんにも関係ないのに……」
ついこぼしてしまった心の声。それを聞き逃さなかった宮口さんが、ギロッと私を睨む。
「す、すみません」
なぜかわからないけれど、ついつい謝ってしまう。
だって眼力が強いんだもん。こんな風に睨まれた、さすがの私も蛇に睨まれた蛙。身がすくんで動けないよ。