敏腕社長に拾われました。
●秘書と鋏(ハサミ)は使いよう
結局虎之助が秘書室に戻ってきたのは、この部屋を出て行ってから一時間後。
じきに戻ってくると言ったのは、どこのどなたでしたでしょうか?
恨めしい気持ちで永田さんを見れば、虎之助と何やら真剣な顔つきで話している。
何か問題でもあったんだろうかと、聞き耳を立ててみると……。
「人事部長には話を通しておいた。智乃は来週から正式に、この秘書室で働いてもらう」
「でも社長、彼女は秘書の経験がないんですよね? 一体ここで、何をさせる気ですか?」
永田さんの今の言い方、まるで私は使えないって言ってるようなものじゃない?
そりゃあなたから見たら“小娘”かもしれないけれど、私だってやるときはやるんだから! 見てなさいよっ!!
心の中で意気込んだのに、虎之助ったら。
「智乃は、俺の身の回りの世話とか雑用とかしてもらうつもりだけど、何か?」
なんて、やっぱり小間使い扱いで脱力してしまう。
どうせ仕事をするのなら、もっと責任感を持って働きたいのに……。
少し悔しい思いでいると、話が終わったのか虎之助は私のところまで来て、頭にポンッと手を置いた。