敏腕社長に拾われました。
「喉、乾いた」
そう言えば、朝から水一滴も飲んでなかった。
まだ五月と言えど、夏はもう目前。気温も高くなってきて、午前中から暑い日も多くなってきている。
ボストンバッグの中に手を突っ込み、財布を取り出す。
いきなり追い出したんだから、それなりのお金を入れてくれてるだろうと思っていたけれど。
「五百円玉ひとつ。嘘でしょ……」
どこをどう探しても、それ以外にお金の“お”の字も見えなくて。
ちゃんとした理由も言わず追い出されても、まだ浩輔のことが好きだったのに……。
「このスットコどっこいの、おたんこナス! 浩輔なんて大嫌いだぁー」
すっくと立ち上がり大きな声で叫ぶと、五百円玉をギュッと握りしめる。
上等じゃない。五百円で何日生き延びれるか、やってやろうじゃないの!
切り詰めて生活すれば、一週間はなんとなる? 無理?
「でもまずは、飲み物飲み物っと」
見てくれの悪いスキップをしながら、公園の脇にある自販機コーナーに向かう。