敏腕社長に拾われました。

「この女の、どこがいいのか……」

「え?」

何の話? この女って私のこと? 何言ってるの、永田さん。

おでこに手を当てて不思議そうな顔をしている、永田さんの顔を覗きこむ。

でも永田さんは、「さあ、早く行きますよ」と知らんぷり。

あれれ、私のことは無視ですか?

そのまま何事もなかったように、先を歩く永田さんの背中に向って、軽くあっかんべーをお見舞い。

やっちゃったもんね。

ひとりで満足していると、急に振り向いた永田さんと目が合う。

「あとで、覚えておけよ」

は? 今なんと、おっしゃいました? あとで、覚えておけよ? 私の聞き間違い? ちょっと口調が、いつもと違ってるような……。

「永田、さん?」

「はい、なんでしょうか?」

ゴールドのメガネを光らせて、冷ややかな目線を向ける。

あら、やっぱりいつもの永田さんだ。

さっきのは、一体なんだったんだろう。

不審に思いつつも、正面玄関に停めてあった車に乗り込んだ。



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