敏腕社長に拾われました。
永田さんは、何があるともどこへ行くとも何も言わない。ただ黙って車を走らせている。
息が詰まるんですけど……。
このままじゃ窒息死してしまいそうで、窓を開けようと手を伸ばす。
「開けるなよ。風が舞って髪が乱れる」
突然発せられた言葉に体をビクつかせると、声がした方へゆっくり顔を動かした。
「あのぉ、今のって永田さん……ですよね?」
恐る恐る聞いてみる?
「はあ!? 俺以外に誰がいるって言うの。このちんちくりん女」
ですよねぇ。何この人、二重人格?
……っていうか、私のことを『ちんちくりん女』って言った? それちょっと、聞き捨てならないんですけど!
私のどこが“ちんちくりん“だって言うわけ?
これはね、“ちんちくりん“って言わないの。一般的より、ほんのちょっと背が低いだけ。今どきヒールの高い靴だってあるんだから、そんなこと言うなんてナンセンス。
身長150センチの、どこが悪いっていうのよ!!
と心の中で息巻いて、呼吸を乱す。
「何、その顔。今の俺にビックリ!みたいな顔しちゃって。可愛いじゃん」
永田さんは赤信号で車を停めると、私の頬に手を当てた。