敏腕社長に拾われました。

嫌だ……。

「触らないで!」

無意識にその手をはねのけると、永田さんの顔を睨みつけた。

「お~怖い怖い、襲われるとでも思った? 自意識過剰もいいかげんにしろよ。俺は社長と違って、お前になんてこれっぽっちも興味ないから」

そう言って永田さんは嘲り笑うと、一瞬にしてその顔を冷ややかなものに変える。

「どうやって社長に近づいた?」

「はい?」

言ってる意味が分からない。私のことを罵ったと思ったら、今度は虎之助とのこと?

今までも冷たい視線や態度は取られてきたけれど、今目の前にいる永田さんはどの永田さんよりも怖い。

「お前って、畠山乳業の元社員なんだってな。うちの会社に迷惑かけといて、よくノコノコと顔を出せたもんだ」

「ノコノコなんて……」

出したくて出したんじゃないのに。

そう言い返したいのに、永田さんのあまりの変わりようにこれ以上声が出ない。

この人は、一体何者? ただの秘書じゃない?

恐怖から自分で自分の体を抱きしめると、できるだけ永田さんから距離をとった。



< 63 / 248 >

この作品をシェア

pagetop