敏腕社長に拾われました。
嫌だ……。
「触らないで!」
無意識にその手をはねのけると、永田さんの顔を睨みつけた。
「お~怖い怖い、襲われるとでも思った? 自意識過剰もいいかげんにしろよ。俺は社長と違って、お前になんてこれっぽっちも興味ないから」
そう言って永田さんは嘲り笑うと、一瞬にしてその顔を冷ややかなものに変える。
「どうやって社長に近づいた?」
「はい?」
言ってる意味が分からない。私のことを罵ったと思ったら、今度は虎之助とのこと?
今までも冷たい視線や態度は取られてきたけれど、今目の前にいる永田さんはどの永田さんよりも怖い。
「お前って、畠山乳業の元社員なんだってな。うちの会社に迷惑かけといて、よくノコノコと顔を出せたもんだ」
「ノコノコなんて……」
出したくて出したんじゃないのに。
そう言い返したいのに、永田さんのあまりの変わりようにこれ以上声が出ない。
この人は、一体何者? ただの秘書じゃない?
恐怖から自分で自分の体を抱きしめると、できるだけ永田さんから距離をとった。