敏腕社長に拾われました。
●能ある虎は爪を隠す?
永田さんに連れられて来たのは、高級住宅街に佇む一軒の高級料亭。腕時計を見れば、時刻はお昼の十二時を回っている。
「ちょっと待ってろ」
永田さんが和服を着た女性のところへ行ってしまうと、店の中をぐるっと見渡す。
「ランチの時間だけど、まさかここでとか?」
純和風の門をくぐり抜けると、素敵な日本庭園が広がっていて。それだけでも驚きだったのに、店の中の美術品や調度品の数々に目を奪われる。
虎之助って、ホントに社長さんなんだ。いつもこんな高そうなお店で、お昼ごはん食べてるのかしら。
自分とは住む世界が違いすぎる……。
虎之助と少しだけ距離を感じてシュンとしていると、この料亭の女将さんらしき人と話をしていた永田さんが私のところに戻ってきた。
「行くぞ。取引先の常務も一緒だ。粗相のないように」
「はい。って、えぇ!?」
思わず大きな声を出してしまい、永田さんに睨まれる。
「すみません……」
だってランチだって言うこともさっき聞いたばかりなのに、取引先の常務さんも一緒なんて。
食事が喉を通るかしら……。