敏腕社長に拾われました。
やっぱり朝は、コーヒーだよね!
右手で握っていた五百円玉を指先で掴むと、自動販売機のコイン投入口に手を伸ばす。
まずは喉を潤して、後のことはゆっくり考えるとしよう。
なんて、そんなことを考えたのがいけなかった。
なんとなく気持ちも落ち着いてきて気が緩んだのか、はたまた集中力に欠けていたのか。コイン投入口にすんなり入ってくれなかった五百円玉は、私の指から離れて地面に落ちると、チャリンと音を立ててからコロコロと転がって……。
「え? あぁっ!!」
私が腕を伸ばしたのも虚しく、公園脇の側溝の穴の中に吸い込まれていった。
「ちょっと、私の五百円玉! 出てきなさいよ!」
そんなこと叫んだって、五百円玉が『はーい』と返事をするわけでも、自分で這い上がってくるわけでもなく。
そっちがその気ならこっちから取りに行くまでと側溝の蓋を持ち上げようとしてみても、女一人の力ではどうすることもできなくて。
「どうしてこうなっちゃうのよ……」
力なく地面にペチャンと座り込むと、ただ側溝の穴を見つめた。