敏腕社長に拾われました。
高級料亭、しかも純和風造り建物だから部屋は全部和室だと思っていたのに、桔梗の間は和洋折衷というのか世界各国の調度品が飾られた洋間。
六人がけのテーブルに、虎之助と高城常務が向い合って座っている。
虎之助の席のななめ後ろ辺りに立つと、もう一度頭を下げた。
「高城常務。これはうちの秘書室のニューフェイス、早瀬智乃です。アホな子ですけど、可愛がってやって下さい」
「アホな子って!」
何もこんな席で、アホ呼ばわりしなくてもいいのに……。
ここが高級料亭だということも忘れて、大声を出してしまう。
「元気な子だね。でも虎之助くんが女性を同席させるなんて驚きだよ。どんな心境の変化かな?」
高城常務はそう言うと、興味津々といった顔で虎之助に迫る。
「高城常務には参りますね。今日のところはノーコメントってことで。いずれまた、ゆっくり話をさせてもらいます」
虎之助が高城常務の言葉をうまく交わすと、ふたりはお互いの顔を見て笑いあう。
なんだ、今の会話。女性を同席やら心境の進化やら、何がなんだかさっぱり分からない。ひとり置いてけぼり気分なんですけど。