敏腕社長に拾われました。

高級料亭、しかも純和風造り建物だから部屋は全部和室だと思っていたのに、桔梗の間は和洋折衷というのか世界各国の調度品が飾られた洋間。

六人がけのテーブルに、虎之助と高城常務が向い合って座っている。

虎之助の席のななめ後ろ辺りに立つと、もう一度頭を下げた。

「高城常務。これはうちの秘書室のニューフェイス、早瀬智乃です。アホな子ですけど、可愛がってやって下さい」

「アホな子って!」

何もこんな席で、アホ呼ばわりしなくてもいいのに……。

ここが高級料亭だということも忘れて、大声を出してしまう。

「元気な子だね。でも虎之助くんが女性を同席させるなんて驚きだよ。どんな心境の変化かな?」

高城常務はそう言うと、興味津々といった顔で虎之助に迫る。

「高城常務には参りますね。今日のところはノーコメントってことで。いずれまた、ゆっくり話をさせてもらいます」

虎之助が高城常務の言葉をうまく交わすと、ふたりはお互いの顔を見て笑いあう。

なんだ、今の会話。女性を同席やら心境の進化やら、何がなんだかさっぱり分からない。ひとり置いてけぼり気分なんですけど。



< 70 / 248 >

この作品をシェア

pagetop