敏腕社長に拾われました。
永田さんを見れば私の顔を見て、はぁ~とため息をついて呆れ顔。
そのため息と呆れ顔は、虎之助に対して? それとも私?
私、なんにもしてないんですけど……。
虎之助に促されて隣の席に座ると、入り口で立っていた永田さんが虎之助に近づく。
「社長、わたくしはこの辺で」
「なんだ、お前も一緒に食べていけばいいだろう」
虎之助が永田さんを引き止める。
「そうしたいのはやまやまなのですが、急ぎの仕事がありまして」
「そうか、仕方ないな」
虎之助が残念そうな顔をすると、高城常務も同じような顔を見せた。
「私も永田くんの話を楽しみにしてたが残念だ。また次の機会にでも、よろしく頼むよ」
高城常務の言葉に永田さんが、驚くような顔をする。
え、笑顔!? 永田さんでも、こんな顔できるんだ。
ゴールドのメガネからのぞかせる瞳は緩く弧を描いていて、もしかしたら永田さんって良い人?なんて思ってしまう。
「わかりました。でも今日は私の代わりに、早瀬が面白い話をしてくれると思いますので」
え? 早瀬って、私?
離していた視線を永田さんに戻すと、良い人だと思った笑顔はどこを探しても見つからず。代わりに右側の口角をクイッと上げ、不敵な笑みを貼り付ける。
『せいぜい頑張れよ、ちんちくりん女』
そんな声が聞こえてきそうな顔に、騙されたと唇を噛んだ。