敏腕社長に拾われました。

永田さんを見れば私の顔を見て、はぁ~とため息をついて呆れ顔。

そのため息と呆れ顔は、虎之助に対して? それとも私?

私、なんにもしてないんですけど……。

虎之助に促されて隣の席に座ると、入り口で立っていた永田さんが虎之助に近づく。

「社長、わたくしはこの辺で」

「なんだ、お前も一緒に食べていけばいいだろう」

虎之助が永田さんを引き止める。

「そうしたいのはやまやまなのですが、急ぎの仕事がありまして」

「そうか、仕方ないな」

虎之助が残念そうな顔をすると、高城常務も同じような顔を見せた。

「私も永田くんの話を楽しみにしてたが残念だ。また次の機会にでも、よろしく頼むよ」

高城常務の言葉に永田さんが、驚くような顔をする。

え、笑顔!? 永田さんでも、こんな顔できるんだ。

ゴールドのメガネからのぞかせる瞳は緩く弧を描いていて、もしかしたら永田さんって良い人?なんて思ってしまう。

「わかりました。でも今日は私の代わりに、早瀬が面白い話をしてくれると思いますので」

え? 早瀬って、私?

離していた視線を永田さんに戻すと、良い人だと思った笑顔はどこを探しても見つからず。代わりに右側の口角をクイッと上げ、不敵な笑みを貼り付ける。

『せいぜい頑張れよ、ちんちくりん女』

そんな声が聞こえてきそうな顔に、騙されたと唇を噛んだ。



< 71 / 248 >

この作品をシェア

pagetop